或る動画編集者の休日
- ruborvini
- 6月10日
- 読了時間: 2分
【※本記事は連載型ストーリーコンテンツの一部であり、記載内容はフィクションです】
最近はすっかり、ボクも動画のメンバー入りだ。
今までずっと裏方で、記念日しか出てなかったのに。
これも、くろくんがスランプのでろんでろんな感じで、お休み中だからだ。元気になってくれると信じてる。
こりんちゃんだって空元気ぎみだけど、彼女のアイデアを叶えてあげる。
二人の夢を支えるのが、ボクの誇りであって、生き甲斐だから。
今日の握手会は、こりんちゃんが担当。
ボクはお忍びモードで、周辺を歩いてた。
ふと、ひとりの女の子が目に入った。
初々しさのある参戦服と、あまり長くないツインテールに、見覚えがあったんだ。
「きみ」
その子はびくっと震えて、慌て気味。
大丈夫、『同類』だよ。そんな仕草をしてみせると、彼女は小さく息をついて、こちらをじっくり見た。
「えっと……もしかして一昨日、スコルコの会場に来てた?」
その子はコクンと頷く。
ボクに憧れて似せたであろう、二つ結びの髪が揺れる。
それからリュックへ手を突っ込んで、がさがさと鳴らして、一昨日の戦利品を見せてくれた。
「ツバサちゃんとね、ツーショットも撮ってもらっちゃったんだよ。すごく、幸せだったなぁ」
にぱーっと笑って空を見て。
ぬいぐるみマスコットと、大当たりの缶バッジを握りしめて。
そしてまたこちらを見た、その瞳は。
もう既に、淀んで濁った絶望の色をしていた。
馬鹿だ。ボクは馬鹿だ。
ボクは。ボクらの夢は。
……いや、そんな訳ない。
ボクらが築いたこの夢は、決して。


